■ 農地の相続は“普通の土地”と何が違うのか
農地を相続した場合、宅地や山林とは異なる特別なルールが適用されます。
農地は食料生産を守るため、農地法という専門の法律で管理されており、誰でも自由に取得・売却できる土地ではありません。
そのため「相続したものの、どう扱えばいいのか分からない」という相談が多く寄せられます。
● 農地は農地法の規制を受ける
農地法では、農業を続ける意思と能力がある人でなければ農地を取得できません。
売却や賃貸には、農業委員会への許可や届出が必要になる場合があります。
この点が、一般の不動産と大きく異なるポイントです。
● 相続しても自由に売れない理由
農地を売却する際は、買い手が農地を適切に耕作できるかどうかが判断されます。
農家でない人が購入する場合や、宅地利用などの“転用”を希望する場合には、別の許可手続きが必要となり、手続きが複雑になります。
■ 農地を相続したときに必要な手続き
相続が発生した時点から、いくつかの手続きが必要になります。
特に2024年から相続登記が義務化されたため、名義を放置することはリスクにつながります。
● 相続登記の義務化
農地であっても、死亡から3年以内に相続登記を行う義務があります。
放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
● 農地法第3条の届出・許可
相続しただけであれば許可は不要です。
ただし、農地を第三者へ売却したり貸したりする場合は、農業委員会の許可が必要になります。
状況によっては、農業委員会から耕作状況の確認が行われることもあります。
● 農業委員会とのやり取りで必要な書類
農地に関する手続きでは、次のような書類を求められることが多くあります。
- 相続関係が分かる戸籍
- 登記事項証明書
- 農業経営状況の申請書
- 農地の位置図や地番の資料
初めて手続きをする方にとっては、準備だけでも大きな負担になることがあります。
■ 農地を売却したいときに直面する“3つの壁”
農地を売却する際には、一般の不動産とは違う独自のハードルがあります。
● 壁①:売れる相手が限られる
農地を取得できるのは、農地を適切に耕作できると判断された人に限られます。
そのため、買い手の選択肢が少なく、売却までに時間がかかることがあります。
● 壁②:農地転用許可が必要
買い手が宅地利用や駐車場化などを希望する場合は“農地転用”の許可が必要です。
市街化区域では比較的取りやすい一方、調整区域では基準が厳しく、審査に時間がかかることがあります。
● 壁③:売却までの期間が長くなる
農業委員会の審査は多くの自治体で月1回のため、申請から許可まで数ヶ月かかることがあります。
売買契約のタイミングと許可取得の順序を調整する必要があり、計画的に進めることが大切です。
■ 農地を転用する場合の手続きと注意点
農地転用とは、農地を宅地・駐車場・太陽光発電など、農地以外の用途に変えることです。
● 農地法第4条・第5条の許可
自分で農地を転用する場合は第4条、第三者が取得して転用する場合は第5条が適用されます。
いずれも自治体の審査を受け、農業委員会の意見を踏まえて許可が判断されます。
● 市街化区域/調整区域での違い
- 市街化区域:比較的許可が出やすい
- 市街化調整区域:原則として許可が出にくい
同じ農地でも、立地によって転用の難易度が大きく変わります。
● 許可までの期間
書類準備や現地確認、農業委員会の審査を経るため、1〜3ヶ月以上かかるケースが一般的です。
相続後すぐに売却したい場合、時間の確保が必要になります。
■ ケーススタディ:農地を相続した40代が売却を決めた例
● 相続直後の状況
地方の実家近くの農地を相続したものの、家族の中に農業を続ける人がいない状態でした。
そのため、草刈りなどの維持費だけが毎年発生していました。
● 売却までに必要だった手続き
- 相続登記
- 農地法第3条の届出
- 農地転用許可申請
- 買主との調整
- 売買契約の締結
実際には、農業委員会との書類のやり取りや追加提出も重なり、手続き全体で半年以上かかりました。
● 発生した費用・リスク
- 許可申請の手数料や測量費
- 転用許可が下りない可能性
- 買い手が見つかるまでの維持管理コスト
こうした負担を考えると、早めに状況を把握し、計画的に進めることが重要です。
■ 農地相続で後悔しないためのチェックリスト
● 相続前に確認しておきたいこと
- 農地の地番・所在地・利用状況
- 誰が耕作しているか
- 転用可能性(市街化区域か調整区域か)
● 売却を検討する際の注意点
- 買い手候補が農地を適切に扱えるか
- 転用許可にどれだけ時間がかかるか
- 農業委員会の審査時期
● 維持管理コストを把握する
農地は除草費や固定資産税が毎年必要です。放置すると雑草が広がり、近隣トラブルにつながることもあります。
■ まとめ:農地相続は“放置しない”ことが最大の対策
農地の相続には、一般の不動産にはない手続きや規制があります。
法律と不動産実務の両方を理解している専門家が関わることで、手続きを大幅にスムーズに進めることができます。
行政書士としての法的手続きと、宅建士としての不動産評価・売却の視点を合わせて、最適な方法をご提案いたします。
複雑な農地や不動産の扱いにお悩みの際はお気軽にご相談ください。



