福祉事業所の閉鎖は突然やってくることがあります。しかし、その背後には必ずと言っていいほど、積み重なった課題と見過ごされた兆候があります。今回は、とある就労継続支援B型事業所の関係者からの話をもとに、経営失敗の舞台裏と、現場で起きていたリアルな声を追いました。この記事では、利用者・職員・経営者それぞれの視点から見える問題点、制度の限界、そして次に同じ失敗を繰り返さないためのヒントを探ります。
目次
突然の閉鎖通告:あるB型事業所の現場
2024年秋、大阪市内にあったある就労継続支援B型事業所の経営者は、突然職員・利用者に向けて「来月末で事業を終了する」と告げました。前日まで何の兆候もなかっただけに、現場は大混乱したそうです。なかでも事業所の利用者とその親族は、戸惑いと不安の中に放り込まれました。
「昨日まで普通に作業していたのに、急に“閉鎖”って……」
ある利用者の家族はそう話します。施設が彼らにとって「居場所」だったからこそ、その喪失感は計り知れません。
崩壊の前兆:制度と現実の乖離
就労継続支援B型は、障がいのある人が自分のペースで働きながら社会との接点を持つことを目的とした制度です。しかし、現場では利用者の増減、工賃収入の不安定さ、加算取得のための事務負担などが重なり、運営は年々厳しさを増しています。
また、行政による実地指導や監査が年々厳格化される中で、書類整備や人員配置基準の維持に追われ、本来の「支援」に割ける時間が減っていくという矛盾も生まれています。
「形式を整えることが先になって、利用者支援が後回しになる」
と話す元サービス管理責任者の言葉が、制度と現実のギャップを象徴しています。
職員の苦悩と利用者の不安
閉鎖が決まった日から、現場は一変しました。職員たちは自分の雇用への不安を抱えながらも、最後まで利用者を見守ろうと必死でした。
「明日もちゃんと通所してきてくれるかな」
「次の受け入れ先、間に合うだろうか」
特に支援員たちは、利用者の心のケアと新しい事業所への橋渡しに奔走しました。
一方、利用者側にも深刻な影響が出ました。中には再び引きこもりに戻ってしまう人も。社会参加のきっかけを失うリスクが、現実のものとなったのです。
なぜ経営は破綻したのか?
取材を進めると、経営側の甘さや見通しの甘さも見えてきました。工賃収入だけでは黒字化が難しい中、施設外就労の契約が打ち切られたことが決定打となりました。
「人件費を抑えるために最低限の人員で回していたが、それでは加算が取れない。結果、負のスパイラルだった」と元代表は振り返ります。

さらに、不動産選定にも問題がありました。家賃の高い物件を選んだことで固定費が圧迫。開設当初から資金繰りは綱渡りだったということもわかりました。
再出発への教訓:次に活かすには
今回のケースは「福祉」という公共性の高い分野であっても、経営視点が欠けては成り立たないということを物語っています。
・加算の仕組みを熟知し、取得可能な体制を整える
・物件は“支援”と“収支”の両立ができる条件で選定
・行政の支援や他法人との連携も柔軟に取り入れる
そして何より大切なのは、「利用者の生活がかかっている」という視点を、常に忘れないことです。

再出発を誓った元職員たちの中には、別の事業所で再び支援の現場に立つ人もいます。福祉は「仕組み」だけでなく、「人」によって成り立つ。だからこそ、制度や経営の話に終始せず、現場の声をもっと反映させた仕組みづくりが必要だと、改めて感じさせられる出来事でした。



