就労継続支援A型事業は、障害のある方々に働く機会を提供する重要な福祉サービスです。しかしその一方で、経営の持続可能性という課題に直面しています。生産活動から得られる収入のみで最低賃金を確保する制度設計のなかで、事業の継続には収益構造の刷新と明確な経営戦略が不可欠です。
本記事では、厚生労働省のガイドラインおよび実際に経営改善に成功した事業所の事例をもとに、収益モデルを見直すための具体策を紹介します。

1. A型事業所の収益構造と直面する課題
A型事業所では、売上から経費を引いた金額で利用者に最低賃金を支払うことが原則とされています。したがって、単なる福祉支援ではなく、事業として成立することが制度上求められます。
しかし、現状では全国の7割近くの事業所が経営改善計画の提出対象となっています(※厚生労働省「令和4年度 就労継続支援A型の実態調査」より)。この背景には、低単価請負の比率の高さ、短時間勤務による生産性の限界、高コスト構造など、複合的な要因があります。
2. 収益モデル改善の基本戦略
厚生労働省は、収益改善に有効な7つの戦略を提示しています。
① 価格交渉と高付加価値化
請負単価が著しく低い場合は、交渉や業務内容の見直しが必要です。自主製品については、ブランディングやストーリー設計を行い、付加価値を高める工夫が有効です。
② 市場ニーズに沿った商品開発
地域資源やニーズに応じた新商品(例:地元食材を活用した加工食品、障害者アートを使った雑貨など)によって、独自の収益源を確保する取り組みが注目されています。
③ 販路の多様化
事業所内販売に依存せず、地域店舗や企業との連携、ECサイトの活用など、BtoBおよび外販を拡充することで安定的な売上基盤を築けます。
④ 原価の見直し
仕入れルートの再構築、在庫管理の強化、製造ロスの削減などにより、利益率向上が期待できます。
⑤ 作業工程の効率化
支援員の配置最適化、工程のマニュアル化やツールの導入により、利用者の作業効率を高めることが可能です。
⑥ 外部連携による新規事業の創出
施設外就労や地域企業との業務提携など、従来の内製業務からの転換を図り、多様な収益源を持つ経営へシフトします。
⑦ 不採算事業の撤退と集中投資
成果が見込めない業務からは撤退し、資源を収益性の高い分野に集中する判断が経営安定に直結します。
📈 収益改善 7つの戦略
厚生労働省提示による効果的な取り組み方針
3. 実際に経営改善を果たした事業所の例
以下は実際に成果をあげたA型事業所の例です。
- ドリームファーム(愛知県):高価格帯商品の開発により売上単価を向上
- ディーセントワーク平山台(東京都):仕入れ先見直しで原価率を15%改善
- ジョイナスコーヒー(福岡県):キッチンカーによる移動販売で販路拡大
- ラボラーレ登米(宮城県):複数企業と連携し、受注内容を多様化
いずれの事業所も、「利用者の特性を踏まえた支援」と「経済的視点をもった収益設計」の両立を実現しています。
4. 経営改善に必要な体制づくり
収益改革を進める上で、以下の基盤整備が不可欠です。
- 経営者と支援者の役割分担と情報共有の徹底
- 損益分岐点を可視化する財務管理体制の構築
- 計画的な人材育成と支援員のモチベーション維持
- 自治体や外部専門家の助言による第三者的視点の導入
5. まとめ:持続可能な就労支援のために
A型事業所の経営改善は、単なるコスト削減や利益追求ではありません。利用者の「働く場」を守るという社会的責任を果たすための経営再構築です。
制度の本質を理解し、地域に根ざした経営戦略を積み重ねることで、支援の質と経営の安定は両立可能です。
計画策定の伴走支援、現地視察など、実践的な支援をご希望の事業所様はお気軽にご相談ください。貴所の課題解決をサポートします。



