相続した不動産は、相続登記(名義変更)を済ませなければ、通常は売却手続きを進めることができません。
売却に至るまでには、相続人の確定、遺言書の確認、遺産分割協議、相続登記、不動産会社との契約など、順序立てて進めるべき手続きがあります。
本記事では、相続不動産を売却するまでの流れを時系列で整理し、実際の相談現場で多い注意点やつまずきやすいポイントを解説します。
相続不動産の売却を検討している方が、全体像を把握できる内容です。
結論|相続不動産の売却は「相続登記」が出発点
相続した不動産を売却する際、最初に取り組むべきなのが相続登記(名義変更)です。
名義が被相続人のままでは、原則として売主としての手続きを進めることができません。
また、相続人が複数いる場合、遺産分割の話し合いがまとまらないことで、売却そのものが進まなくなるケースも少なくありません。
相続不動産の売却は、「不動産の問題」である前に相続手続きの問題であることを理解しておく必要があります。
相続した不動産を売却するまでの全体の流れ【6ステップ】
① 相続人の確定(戸籍調査)
最初に行うのは、誰が相続人になるのかを正確に確認する作業です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集し、法定相続人を確定させます。
相続人が確定していないまま進めると、
- 遺産分割協議が無効になる
- 相続登記が受理されない
といった問題が生じます。
前婚の子や養子がいる場合は、特に慎重な確認が必要です。
② 遺言書の有無を確認する
次に、遺言書が残されているかを確認します。
遺言書がある場合は、原則としてその内容に沿って相続手続きを進めます。
公正証書遺言であれば検認は不要ですが、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要です。
遺言書の有無によって、その後の手続きの進め方は大きく変わります。
③ 遺産分割協議を行う(遺言書がない場合)
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行います。
ここで、不動産を誰が取得するのか、または売却して現金で分けるのかを決定します。
売却を予定している場合でも、一度は名義人を決める必要があります。
代表的な方法は以下のとおりです。
- 特定の相続人が不動産を取得して売却する
- 共有名義で登記したうえで売却する
ただし、共有名義は売却時の意思決定が難しくなるため、慎重な検討が必要です。
④ 相続登記(名義変更)を行う
遺産分割協議がまとまったら、不動産の名義変更を行います。
2024年から相続登記は義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象となる可能性があります。
相続登記が完了すると、
- 所有者として売却活動を行える
- 不動産会社と媒介契約を結べる
ようになります。
売却を考えている場合、この手続きは避けて通れません。
⑤ 不動産会社へ査定依頼・媒介契約
名義変更後、不動産会社に査定を依頼します。
査定額や販売方針は会社ごとに異なるため、複数社に相談するのが一般的です。
媒介契約には、
- 専属専任媒介
- 専任媒介
- 一般媒介
の3種類があります。
相続不動産では、連絡の取りやすさや説明の丁寧さも重要な判断材料になります。
⑥ 売買契約・決済・引渡し
買主が決まると売買契約を締結し、代金決済と引渡しを行います。
相続不動産では、次の点に注意が必要です。
- 境界が確定していない土地の有無
- 建物の老朽化や契約不適合責任
- 抵当権や仮登記が残っていないか
築年数が古い物件も多いため、事前説明がトラブル防止につながります。
相続不動産売却でよくある注意点
名義変更を後回しにして手続きが進まない
「買主が決まってから名義変更すればよい」と考え、相続登記を後回しにするケースは少なくありません。
しかし、実務上は名義変更が完了していないと売却手続きは進めにくくなります。
相続人の一部が反対して売却できない
遺産分割には相続人全員の合意が必要です。
反対する相続人がいる場合、売却までに時間がかかることがあります。
早い段階で意思を確認し、話し合いの場を設けることが重要です。
税金や費用を考慮せず後悔する
相続不動産の売却では、
- 登記費用
- 仲介手数料
- 譲渡所得税
- 測量費用
などが発生する場合があります。
売却価格だけでなく、最終的に手元に残る金額を意識しておくことが大切です。
行政書士ができるサポート
相続不動産の売却では、手続き全体を整理し、関係者をつなぐ役割が重要です。
行政書士は、次のような支援を行います。
- 相続人調査・戸籍収集
- 遺産分割協議書の作成
- 相続手続き全体の進行管理
- 不動産会社や他士業との連携
相続と不動産の間に立ち、手続きを円滑に進めることが行政書士の役割です。
まとめ|相続不動産売却は「順番」が結果を左右する
相続した不動産を売却するには、
相続人の確定 → 遺産分割 → 相続登記 → 売却活動
という順序を守ることが重要です。
相続は感情面の負担も大きくなりがちです。
早めに全体像を把握し、計画的に進めることで、不要なトラブルを避けやすくなります。
不安がある場合は、専門家への相談も検討してください。



