「相続した土地を引き継ぎたくない」
「遠方の山林や使い道のない土地をどう処理すればいいの?」
そんな相談が近年増えています。
土地を手放したい場合に利用できる制度は、次の2つです。
- 相続放棄
- 相続土地国庫帰属制度
この2つは目的や仕組みが大きく異なります。
土地の状態や家族の事情によって選ぶべき制度は変わるため、違いをしっかり理解しておくことが大切です。
土地を相続したくない相談が増えている理由
● 管理や固定資産税の負担が重い
草刈り・倒木処理など、土地の維持管理は想像以上に手間と費用がかかります。
使っていなくても毎年固定資産税がかかるため、負担に感じる人が増えています。
● 売りたくても売れない土地が増えている
地方の山林や農地は買い手がつきにくく、“負動産化”しやすい状況です。
● 相続登記の義務化で放置できなくなった
相続登記を放置すると過料の可能性があり、「使わない土地でも登記が必要」になったことから相談が増えています。
相続放棄と相続土地国庫帰属制度の違い
● 相続放棄とは
家庭裁判所に「相続しません」と申述する手続きです。
認められると、最初から相続人ではなかった扱いになります。
特徴
- すべての遺産を受け取らない
- 原則、相続開始を知った日から3か月以内に手続き(延長申請も可能)
- 放棄した財産は次順位の相続人へ
- 借金が不安な場合のリスク回避にも有効
※いらない土地だけを選んで放棄することはできません。
● 相続土地国庫帰属制度とは
2023年に始まった制度で、相続した土地だけを国に引き取ってもらえる仕組みです。
申請後、国の審査を受ける必要があります。
特徴
- 対象の土地のみ手放せる
- 申請後に審査(境界・管理状況・危険箇所など)
- 国への負担金(10年分の管理費相当)が必要
- 建物のある土地、境界不明の土地などは対象外
二つの制度を比較
| 項目 | 相続放棄 | 国庫帰属制度 |
|---|---|---|
| 対象 | すべての相続財産 | 指定した土地のみ |
| 他の財産 | 受け取れない | 受け取れる |
| 費用 | 数千円程度 | 負担金が必要 |
| 条件 | 原則3か月以内 | 審査あり |
| メリット | 手続きが簡単 | 土地だけを手放せる |
| デメリット | 全財産を放棄 | 審査で不承認の可能性 |
ケース①|実家の山林を相続したくない場合
山林は見た目以上に管理負担やトラブルが多く、相続を避けたいという相談が多い土地です。
● 相続放棄が向いている場合
- 山林以外にも負担の大きい不動産がある
- 借金の可能性があり心配
- 他の相続財産を受け取る必要がない
- 次の相続人に引き継いでも問題ない
相続全体から離れたい場合に適しています。
● 国庫帰属制度が向いている場合
- 預貯金など他の財産は受け取りたい
- 家族に負担をかけたくない
- 山林の管理状態が良好
- 境界が明確で危険箇所が少ない
状態が整った山林であれば、引き取りを申請できる可能性があります。
ケース②|古い実家の宅地を相続したくない場合
古い建物の解体費が高額で、売却も難しい……という悩みが増えています。
● 相続放棄を選ぶと
宅地だけでなく、預貯金や車なども含めてすべて放棄することになります。
後々のトラブルを避けるためには家族間での相談(同意形成)が欠かせません。
● 国庫帰属制度を利用する場合
宅地は確認項目が多く、準備が必要になるケースがあります。
よくある不承認のポイント
- 建物が残っていると原則不可
- 境界不明は不承認の可能性大
- 隣地トラブルがあると申請しにくい
- 危険物・埋設物がある土地は対象外
事前に解体・測量などの対策が必要になることもあります。
制度を選ぶ前に確認すべき3つのポイント
● ① 土地の状態を調べる
地目・法令制限・境界・危険箇所を現地確認しましょう。
管理されていない土地ほど、国庫帰属制度の審査は厳しくなります。
● ② 境界資料をそろえる
測量図、公図、境界標など、境界に関する資料を早めにチェックしておくと手続きがスムーズです。
● ③ 家族の意向を共有する
相続放棄は他の相続人に影響するため、事前の話し合いが必要です。
まとめ|土地の状態に合わせて制度を選ぶ
土地を相続したくないときには、次の2つの制度があります。
- すべての財産を手放すなら相続放棄
- 不要な土地だけ手放すなら相続土地国庫帰属制度
土地の状態や家族の状況によって、どちらが適切かは変わります。
制度が使えないケースもあるため、判断に迷う場合は専門家に相談しながら進めると確実です。
行政書士として必要書類や許可申請を整えつつ、宅建士として市場性や活用方法も含めた提案が可能です。
相続と不動産の両面からサポートしますので、ご希望に合わせて最適な進め方をご案内いたします。



