(出典:国土交通省・法務省・日本公証人連合会 2025年10月)
なぜ「不動産を含む遺言書」は難しいのか?
遺言書の中でも最もトラブルが多いのが不動産の相続です。
土地・建物は「分けられない財産」であり、現金や預金と違って公平な分配が難しいからです。
たとえば、
- 長男に自宅を相続させたい
- 次男には現金を渡したい
- しかし評価額が同じでない
このような場合、遺留分侵害や共有名義の紛争が起こりやすくなります。
そこで重要になるのが、不動産を正確に特定して記載する遺言書の書き方です。
曖昧な表現や住所の省略などがあると、後に「この土地を指しているのか?」という争いが生じることもあります。
不動産を遺言に書く際の基本ルール
① 登記簿の内容をそのまま書く
不動産を特定するには、登記簿謄本(全部事項証明書)の記載をそのまま引用するのが原則です。
たとえば次のように書きます。
遺言者は、次の不動産を長男〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。
所在:〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
地目:宅地 地積:150.00平方メートル
家屋番号:〇〇番 種類:居宅 構造:木造瓦葺2階建 床面積:延べ120.00平方メートル
このように、土地と建物をそれぞれ別々に明記することが重要です。
「自宅」「実家」などの表現は避けましょう。
② 評価額のバランスを考慮する
不動産は固定資産評価額や市場価格が異なるため、他の相続人との公平性を意識して書く必要があります。
現金や預金とのバランスが取れない場合、後から遺留分を主張される可能性があります。
行政書士や税理士に相談して、相続全体のバランスシートを作成してから文案を検討すると安心です。
③ 複数の不動産がある場合は一覧表を添付する
土地・建物を複数所有している場合は、遺言書に「別紙一覧表」を添付するとスッキリ整理できます。
| 番号 | 所在地 | 種類 | 相続人 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 千葉県市川市〇〇町〇丁目〇番地 | 土地 | 長男A | 自宅 |
| 2 | 東京都葛飾区〇〇〇〇 | 建物 | 次男B | 賃貸中 |
| 3 | 栃木県那須郡〇〇町〇〇 | 別荘 | 妻C | 売却予定 |
こうした一覧表を作成しておくと、家族が後で登記や売却を行う際も混乱しません。
ケーススタディ:遺言の書き方で分かれた二つの結果
ケース①:明確な指定でスムーズに相続できた例
Aさん(75歳)は、長男に自宅(土地・建物)を、次男に預貯金と株式を相続させる内容の公正証書遺言を作成。
不動産の所在地・面積・評価額を明記したことで、相続時には登記がスムーズに行われました。
結果、相続登記義務化(2024年4月施行)にも適切に対応でき、トラブルは一切なし。
「遺言があるだけで、家族の手続きが全く違う」と実感されたそうです。
ケース②:曖昧な表現が原因で相続争いになった例
Bさん(82歳)は、自筆で「自宅は長男に相続させる」とだけ書いた遺言を残しました。
ところが、登記上の住所と住居表示が異なっており、どの建物を指すのか不明確でした。
結果として、家庭裁判所での調停に発展。
長男・次男の双方に弁護士がつき、相続開始から3年経っても登記ができていません。
このように、不動産は「特定できるかどうか」が明暗を分けます。
不動産を含む遺言書作成の注意点5つ
| 項目 | 内容 | 専門家の助言 |
|---|---|---|
| ① | 登記簿通りに記載する | 所有権・地番を省略しない |
| ② | 地番と住所を混同しない | 「住居表示」と「登記地番」は別物 |
| ③ | 未登記建物がある場合 | 登記または明細書で特定 |
| ④ | 共有名義の整理 | 共有分を誰に相続させるか明確に |
| ⑤ | 評価額の確認 | 固定資産税評価証明書で把握 |
不動産の記載は、1文字の違いで無効になる可能性もあります。
特に、建物の種類・構造・床面積などの記載は登記情報を参照しましょう。
公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらを選ぶか?
不動産を含む場合、結論からいえば公正証書遺言が最も安全です。
理由は次のとおりです。
- 公証人が登記簿を確認してくれる
- 法的ミスがない
- 登記手続きにスムーズに連携できる
ただし、費用を抑えたい場合は「自筆証書遺言+法務局保管制度」を活用する方法もあります。
いずれにしても、作成前に行政書士へ草案をチェックしてもらうことが確実です。
行政書士ができる実務サポート
行政書士は、不動産を含む遺言書の作成にあたり次のような支援を行います。
- 登記簿・評価証明書の取得代行
- 財産目録・別紙一覧表の作成
- 公正証書遺言の文案設計と打合せ同行
- 相続登記・不動産分割の事前整理
- 相続税・固定資産評価に関する専門家連携
こうした実務を事前に整えることで、相続発生後の手続きが圧倒的にスムーズになります。
まとめ|不動産の遺言は「正確さと準備」がすべて
不動産を含む遺言書は、「書けば終わり」ではなく、内容の正確さがすべてです。
住所や面積を誤るだけで無効になることもあり、家族に迷惑をかける結果になりかねません。
だからこそ、
- 登記情報を確認する
- バランスを考える
- 専門家の目でチェックする
この3点を意識することが大切です。
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