最低賃金の引上げ時代に、就労継続支援A型はどう生き残るか? 収益モデルの再構築に迫られる現場

福祉×不動産

2025年10月、全国で最低賃金が大幅に引き上げられます。

厚生労働省の発表によると、全国加重平均は1,004円から1,050円に上昇し、引き上げ幅は過去最大規模となりました。

大阪府では現行の1,064円から49円増の1,113円に改定されます。

A型事業所(就労継続支援A型)は、利用者と雇用契約を結び、最低賃金を遵守する必要があります。

仮に1日5時間・月20日勤務とすると、1人あたりの給与は月111,300円。10名規模では月110万円超となり、前年に比べ約5万円の負担増(49円×100時間×10人)です。報酬単価や工賃単価が据え置かれる中、この増加は経営を直撃します。


目次


2025年10月度の最低賃金引き上げとA型事業所への影響

今回の大阪府改定は全国平均を上回る水準です。

人件費の上昇に加え、事業所は社会保険料の事業主負担分も負うため、実際の支出増はさらに大きくなります。

一方で、2024年度の報酬改定でもA型の基本報酬は据え置きのままであり、追加的な制度支援は限定的です。

事業所は収益改善に自ら取り組む必要があります。

就労継続支援A型とは?最低賃金が適用される理由

A型事業所は、障害者総合支援法に基づき、障害のある人を雇用契約で受け入れる仕組みです。

このため、最低賃金法が適用され、一般企業と同様に賃金は下限を割れません。

利用者保護の観点で重要な設計ですが、事業所には強い経営制約となります。

大阪府の最低賃金:2025年改定と事業所の現実

大阪府の最低賃金1,113円は、全国で上位の水準です。

利用者の労働時間が1日5時間×20日(計100時間)と仮定すると、支給額は月111,300円。この金額には、事業所負担の社会保険料(事業主負担分)が加わるため、実質負担はさらに増します。

一方、国から支給される報酬単価(例:基本報酬や加算)は直近の改定でも大幅な増額はなく、また工賃収入(生産活動収益)も安定しづらい傾向にあります。

結果として、人件費の上昇分をまかなうだけの新たな収益源を確保しなければ、赤字経営に転落するリスクもあります。

収益モデルの限界と再構築の7つの戦略

厚生労働省「就労継続支援A型 経営改善ガイドライン」や実地の改善事例集(2021年度、2022年度)を参照すると、下記のような7つの経営戦略が効果的であると示されています。

1. 高付加価値の商品開発

  • 地域資源との連携によるオリジナル商品の開発(例:高単価ギフト)

2. 販路拡大・EC展開

  • オンライン販売、ふるさと納税への出品など、販路の多様化

3. 工程改善による生産性向上

  • 作業工程の分解と標準化、治具導入による作業効率アップ

4. 原価率の見直し

  • 材料費や配送費の見直し、共同購入などによるコスト削減

5. 業務の絞り込み

  • 採算の合わない事業からの撤退と集中投資

6. 顧客との価格交渉

  • 原価構造の開示により単価アップの交渉材料を明確に

7. 利用者能力の最大化

  • スキルマップを活用した個別支援計画の強化と成果の可視化
就労継続支援A型 経営改善7つの戦略

📈 就労継続支援A型 経営改善の7つの戦略

厚労省ガイドライン・事例集より

1

💎 高付加価値商品の開発

地域の特色を活かした独自性の高い商品・サービスを開発し、競合との差別化を図る

地域資源活用 独自商品 差別化
2

🌐 販路拡大・EC活用

オンライン販売やふるさと納税制度を活用し、従来の販売チャネルを拡大する

オンライン販売 ふるさと納税 販路拡大
3

⚙️ 工程改善による効率化

作業の標準化や治具の導入により、生産性向上と品質の安定化を実現する

作業標準化 治具導入 効率化
4

💰 原価の見直し

共同購入や物流コストの削減により、原価構造を改善し収益性を向上させる

共同購入 物流改善 コスト削減
5

🎯 事業の選択と集中

不採算分野から撤退し、収益性の高い事業に経営資源を集中投入する

事業整理 撤退戦略 資源集中
6

💬 顧客との価格交渉

原価構造を開示し、適正な利益確保のため顧客と単価改定を交渉する

価格交渉 原価開示 単価改定
7

👥 利用者の能力最大化

スキルマップを活用して利用者の能力を可視化し、最適な配置と成果向上を図る

スキルマップ 能力開発 成果可視化

価格交渉で打開:現場の経営改善事例

大阪市内のA型事業所では、2024年度の賃金改定を契機に受注単価見直しを実施。製品価格の原価構成を明示し、取引先企業との価格交渉に成功。従来より20%の単価アップを達成しました。

別の事業所では、利用者の作業工程を工程別に分析し、効率的な配置転換を実施。同じ人数で作業量を15%増加させ、売上高の向上に直結しました。

これらの改善策は、厚労省の改善事例集(2022年)にも記録されています。

支援の質と利益の両立に向けて

A型事業所の役割は、単なる雇用ではなく「支援付き雇用」の提供です。

収益確保と利用者の自立支援を両立させるには、現場の創意工夫と人材育成が不可欠です。

まとめと今後の展望:今、何をするべきか

最低賃金の上昇は今後も続く見通しです。

制度支援が限定される中で、各事業所には自立した経営体制の構築が求められます。

コスト構造の見直しと独自の強みを生かした事業設計、そして利用者の能力を活かす職域の創出が、持続可能な経営への道筋となります。


✅ 最後に:今後の経営相談・制度対応サポートも承ります

経営改善や制度対応に関する具体的な相談をご希望の方は、行政書士・不動産実務の両面からサポート可能です。

現場に即したご提案を希望される場合は、お気軽にお問い合わせください。